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こいものがたり

残念ながら 恋物語 ではない
濃い物語である

何のことはない 酒の話だ
アルコール濃度の低い
例えば ビール等は
「取り敢えず」 パーッと 呑るのである
豪快に エネルギッシュに 振舞うのが
お似合いである

すこし 濃くなると
「コクがあるね」 などと 洒落のごとき物言いで
やや 身構える のである

とても 濃くなると
舌の上で 転がしながら
なんだか 新しい自分に出会えるような
そんな錯覚と
大人になった実感とが
折角の心地よさを 覚ますが如く
なにやら 真剣に考えたりするのである

大人っぽい 濃いやつを
今宵 やっつけようと思う

濃いものがたりが
恋ものがたりに なるやも知れぬ
そんな 危うさも
濃いもの には お似合いだ

そういえば もう 秋なのだ
秋は やっぱり
こいの 季節

年甲斐もなく こいを 想い
今宵も また 性懲りもなく 一献 傾ける

【 訓 】
いつまでも いつまでも
“こい” を しよう と 思うのだが
近頃 “よい” に負けたりする
負けずに ”よいこい”を
したいものだ

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