ニッポンの職人には
妙な いや 誇るべき かたくななところがあった
過去形である
今 そのような職人に会う機会が ほとんどないので
止むを得ず 過去形である
自らの 仕事に自信と 情熱を持ち
ひたすら やり遂げる姿は
かつての ニッポンの 当たり前の 情景であった
言い換えれば
万人が 職人だったと云えよう
そういう 誇りに満ち溢れていた
自分が気に入らない
或いは お客さんが気に入らない
そんなことがあると
銭はもらわない
そんな 頑固が 好きだった
銭金で仕事してんじゃねえんだ と
そんな啖呵を
切ってみたくもなる 心もちが
我がことのように 理解でき
身体中に 滲みわたった記憶がある
その血は
今もなお 流れ続けている
サラリーマンであっても
職人なのだという そんな自分を
妙に納得する 昨今である
決して 損はしていない
何事も損得で評価する時代を
なんとも 残念に思うのである
仕事が 速いか遅いかの 評価ではない
出来が良いか 悪いかの査定の話ではない
自らの仕事に
自信を持てるか否かの
自分自身の 気持ちの問題である
職人が いなくなった
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