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通じない恐怖

概ね8年も前のことを
急に 思い出しました
中国のある都市に 数ヶ月暮らしたときのことです

予想外に長くなった出張で
所持金は乏しくなる一方で
髪だけは伸び放題だったのです

そうして 床屋に行った時の 話です
床屋といっても その設備や技術が様々で
値段も色々あり
どの店にするかが 勝負所となるのです

先輩とともに
町をうろうろと 1時間も歩いてしまいました

一見すると 原宿の美容院 のような店を発見
これは行けそうと 客のいない店内に 入りました

客がいないということは 極めて危ない かもしれないのです
とても下手くそか 床屋を装った 怪しげな商売を展開するか
色々考えられるのですが

探し疲れた二人は
吸い込まれるように 店内に入りました
30代と思われるお姉さんが 何やらしきりに話しかけるのですが
二人の中国語会話能力では 全く通じません

でも どうみても床屋なんだから
髪切ってよ と
何とか お願いすると
鏡の前に座らされ(普通のイスです)
タオルを1枚肩に

何か喋ったかと思うと
CDで音楽を聴き始め
私の頭にシャンプー様のもの を掛けるではありませんか

ちょいと ホテルの 石鹸風の臭いなので
安心していると
シャンプーというより 頭のマッサージを 始めたようです

なんと 20分近くも これを行い
貴重な髪が抜けきるのではと 冷や冷やで
まさに手に汗を握っておりました

言葉が通じない 恐怖を 初めて感じたのです

泡をつかみ取るようにして
お姉さんが 奥に入っていったので
「ああ やっと終わった」 と思っていると

ただ 手を洗ってきただけのようで
もう一度シャンプー様のものを 掛けるではありませんか

「ああ なんて事だ 相手は誤解している」
このとき なぜか 先輩は 既に髪を切っているし
何で私だけ マッサージを続けるの?

そのうち 肩や背中まで 指圧を始めたのです
「頼んでないのに...」

と その時
こっちに来いという合図
奥に行くと
ああ良かった
仰向けに寝るシャンプー台が あるではありませんか

ここまで30分以上掛かっているのです
無事 シャンプーを終えると
さっきとは 違うイスに案内され

今度は ちょいと今風のお兄さんに
何やら聞かれ(全然分かりませぬ)
「ほんのチョット 切って」 と ジェスチャー

な なんと この人が

非常にテキパキと 格好良く髪を切るではありませんか

安心して任せていると
すぐに 終わり のようです

いや 違いました
終わったかに見せて お兄さん 電気バリカンを 持ってきたのです
「うそだよー! 今から それで刈り込むのかよー 頼んでないよ―!」
と叫びたかったのですが
ここまで来ると まな板の鯉状態
とにかく 言葉が通じません

「ヒエー 刈り込みだー」 と観念し
鏡を見入ると

なんと 櫛とバリカンを 旨く使って
きれいに 整え始めたではありませんか

うーん 所変われば… なのです

その後 もう一度シャンプーをして
ほんの少し 襟足を剃って
ドライヤーで 整えながら
「何か付ける?」
この辺は 万国共通のようです

「不要(ブヤウ)」
これは通じました

はい出来上がり
それにしても マッサージの その時間の長いこと

ともあれ 無事終了で 30元(450円程)
帰国前にもう一回やっとこうかな
と 思ったほどです
いい店で 良かったです

中国 大好きです

どんな国に行っても
その国の 酒と文化が
大好きになってしまう そんな 癖を持っているのです

食べ物の 好き嫌いが ほとんどなく
どんな酒でも おいしく頂く
そんな いじきたなさが
そうさせるのかもしれません

人は これを
順応性が高い と
分かりやすく評価してくれます

ただ その場の空気に合う
そんな酒を 頂いているだけなのですが

どんな国に行っても
酒は それなりに旨く
人は皆 優しく接してくれるのです

それが とってもうれしくて
その地の 酒に はまるのです

ああ 人間バンザイ

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