小学校の たしか 3年生だった
そんなに 親しいわけでもない友達を
家に呼んだ
どんな話をしたのか まったく覚えていないのだが
あることが 今も 心の奥に 見え隠れしている
昭和30年代 の 話である
一日のオヤツ代が 15円だった
当時あこがれの 不二家のチョコレート が 30円で
一日我慢しないと 買えないのだが
我慢は 出来なかった
だから 駄菓子専門で しのぎ
姉のおこぼれを ちゃっかり 頂戴していたのだ
そんな 暮らしぶりの中
引き出しには とても大切な プラスチックの ピストルがあった
記憶が曖昧だが 親との 再三の交渉の末に
入手した 自分にとって宝物だったように思う
その 銀色に輝くピストルが
いつの間にか 引き出しから 消えていた
かの“友達”とともに 去っていったと
そう考えるしかない さみしい 思いをした
けれども その友に 問いただすことはしなかった
親や 先生に 報告もしなかった
とても悔しい気持ちだったのに
その ピストルを 取り返す気は まったくなかったことを
鮮明に覚えている
どうして そんなことができるのか
それが 信じられなくて
なんだか そんな事実を 周辺に漏らすことさえも
不信を 増幅するだけのような気もして
子供なりに 「 誰にも言わない 」 決心をした記憶がある
もう 時効だから 書いてしまったが
「なぜ そんなことができたのか」 未だに分からない
自慢げに 見せびらかした覚えもないのだ
貧しさが そうさせたのか だとしたら ものすごく さびしい
物の豊かさより 心の豊かさこそが 大切だと
子や孫に 分かりやすく伝えていきたいと 思う
こんなことが 二度と起こらないように
ふと 50年程前の記憶が 蘇った 夏の瞬間
これからの ニッポンを 憂いつつ
コメント